熱中症
暑熱環境において生じる身体の 適応障害を熱中症(暑熱障害)といいます。地球温暖化に都市部でのヒートアイランド現象が加わっ
て、その発生の増加が社会的注目を集めています。従来、学校スポーツにおける死亡事故が問題となり、スポーツ医学において最も取
り上げられてきましたが、最近の統計により、労働災害としての熱中症、あるいは高齢者での熱中症発生が多いことが認識されていま
す。重症の場合、死に至ることもあります。
熱中症の病態生理
人間の体温は視床下部にある体温の中枢によって一定に保たれるようにコントロールされていますが、高温・多湿の環境の中で水分の
補給を行わず、長時間活動を続けると体温の上昇と脱水・循環不全を生じます。重症型では脳神経の障害、肝臓・腎臓等内臓の障害、
血液 凝固機能の障害、筋肉の融解が起こります。これは死亡率の高い極めて危険な病態です。
・ 熱失神
皮膚血管の拡張によって血圧が低下、脳血流が減少しておこるもので、めまい、失神などがみられます。顔面そう白、呼吸回数の増
加、唇のしびれなどもみられます。脈は速くて弱くなります。
・ 熱疲労
大量の汗をかき、水分の補給が追いつかないと脱水がおこり、熱疲労の原因となります。脱水による症状で、脱力感、倦怠感、めま
い、頭痛、吐き気などがみられます。
・ 熱けいれん
大量に汗をかき、水だけを補給して血液の塩分濃度が低下した時に、足、腕、腹部の筋肉に痛みを伴ったけいれんがおこります。
暑熱環境下で長時間の運動をして大量の汗をかく時におこります。
・ 熱射病
体温の上昇のため中枢機能に異常をきたした状態です。意識障害(応答が鈍い、言動がおかしい、意識がない)が特徴で、頭痛、吐
き気、めまいなどの前駆症状やショック状態などもみられます。また、全身臓器の血管がつまって、脳、心、肺、肝、腎などの全身
の臓器障害を合併することが多く、死亡率も高くなります。
対処方法
熱中症では予防が大切です。
暑い時には熱中症の兆候に注意し、異常がある場合には早めに休むことです。